こんにちは、令和3年度九州大学工学部電気情報工学科に合格した津森です。今回は高専から九州大学編入試験に合格するまでの体験談について書こうと思います。高専から大学編入を考えている高専生にぜひ読んでいただければと思います。自己紹介在学高専・学科:北九州高専 生産デザイン工学科 電気電子コース得意科目:電気系専門科目、数学、物理苦手科目:英語、化学趣味:音楽鑑賞、音ゲー高専での順位1年:3位2年:3位3年:2位4年:2位5年:4位(※1、2年は学年順位、3年~5年はクラス順位)高専からの大学編入で九州大学を選んだきっかけ 私は最初、東京工業大学を志望していました。4年生の後期に、志望校を決めようと先生方に相談したところ、「君には東工大が合っていると思うからオススメだよ」と何人かの先生から助言をいただいたので、東工大に進学しようと勉強を始めました。具体的にこの研究がしたいといった理由はなく、「レベルも高いし環境も充実しているだろう」という軽い気持ちで志望していました。ここから、九州大学に切り替えた理由について述べていきます。5年生の春休みに新型コロナウイルスが流行し始めました。このような状況下で、東京の大学に進学することに不安感を抱き、いつでも実家に帰れる九州内の大学がいいのではないかと考えるようになりました。そこで、家族や先生と何度も話し合いを重ねた結果、九州大学の推薦入試を受験することになりました。私は3、4年生のクラス順位が2位だったため、推薦入試は落ちてしまい、一般入試を受けることになりました。九州大学を受験するにあたり研究室を調べると、超伝導を電気機器に応用している研究室があることを知りました。超伝導という名前のカッコよさと、超伝導の性質に夢があるなと感じ、その研究をしたいということでモチベーションが高まりました。九州大学編入の併願校とその理由 私は、高専の専攻科を併願していました。九州大学を選んだきっかけの部分でも述べましたが、私は九州大学の推薦入試も受験しました。コロナウイルスの影響で推薦入試日が一ヶ月ほど延期となり、その期間は他大学の併願が出来ない状態となってしまいました。その結果、専攻科のみを併願するという結果となりました。高専から九州大学編入の教科別試験対策法 九州大学の編入試験は二日間あります。初日に一般科目である数学、英語の2科目、二日目に専門科目である電気回路、〈電磁気学または計算機工学の選択〉の2科目と面接があります。初めに受験しようと思っていた東工大は数学、物理(力学、電磁気学、熱力学または波動)、化学、英語という試験科目で、九州大学とは全く異なっていました。また、九州大学に切り替えた時期は5年生の5月だったため、一般入試まで3、4か月程度しか時間がありませんでした。このような少ない時間かつ科目も全く異なる状況下で、どの参考書を用いてどのように勉強したかを紹介していきたいと思います。数学数学は大問が4つの構成となっています。出題範囲は・行列・微分方程式・確率・ベクトル解析・複素関数・フーリエ変換、ラプラス変換などが出題範囲として挙げられます。このように範囲は幅広いですが、難易度は他の旧帝大に比べ簡単な方だと思うので、まんべんなく勉強していけば確実に点数が取れる科目になっています。出題傾向としては、「行列、微分方程式>確率>ベクトル解析>複素関数、フーリエ変換、ラプラス変換」という傾向になっていると思います。 主に使用した参考書、問題集は以下の4冊です。 ・編入数学徹底研究・細野真宏の確率が本当にわかる本・演習と応用 ベクトル解析・基礎解析学編入数学徹底研究については、東工大に出題される範囲(二変数関数の極値やチェインルール、微分方程式、行列)のみ解いていたので、全体的に何周か解き、基本的な部分の復習として用いました。確率の本については、友人と一緒に一周だけ解きました。私は確率が非常に苦手だったため、一周だけでは確率の苦手意識が拭えませんでした。時間があれば何周も解くことをオススメします。また、確率密度関数が出題される年もあるので学習しておきましょう。ベクトル解析の本については、第一章~第三章,第四章4.3まで,第五章,第六章6.1だけやっておけば十分です。私はこの本をやったおかげで本番の問題が簡単に解けました。また、ベクトル解析は電磁気学と繋げてイメージすると強く頭に残りました。例えば、マクスウェル方程式の4本の式の積分系と微分系の変換を行うなどがよいと思います。最後に基礎解析学についてですが、この本は微分方程式、ベクトル解析、複素関数、フーリエ級数、ラプラス変換、フーリエ変換の問題が網羅されています。これを一周解いたおかげで解析学の範囲はかなり自信がつきました。微分方程式の範囲で一つ補足があるのですが、微分演算子法という強力なツール(二階微分方程式で特に有用)があるので勉強することをオススメします。英語英語は長文和訳問題が2、3問に加え、和文英訳問題が10問出題されます。私は英語が本当に苦手でやる気も出なかったことに加えて、数学が200点満点なのに対し、英語が100点満点であることもあり、50点取れれば良いだろうという気持ちで勉強していました。主に使用した参考書は・速読英単語 必修編・大岩のいちばんはじめの英文法・英作文ハイパートレーニング 和文英訳編・ドラゴンイングリッシュまず、大岩のいちばんはじめの英文法で、英文法の基礎をつくりました。速読英単語については、単語力と英文読解の力が同時に身につき、時間短縮になるだろうと思い使用していました。英語を英語のまま捉えようと意識して勉強したおかげで、効率よく身についたと思います。この他に長文読解対策はしていません。和文英訳対策として、英作文ハイパートレーニングとドラゴンイングリッシュを使用しました。まず与えられた和文を自分なりに英訳した後で答えを確認すると、ほとんどの場合よくある間違いをしていたので、スムーズに学習が進みました。対応する参考書を使用していないので申し訳ないですが、私の受験した年の和文英訳が、工業英語のようなアカデミックな内容を聞かれたので、その対策をする必要があります。電気回路電気回路は大問が3つの構成となっています。出題範囲は・交流回路の計算・過渡現象・二端子対回路が例年出題されています。交流回路の計算については、位相に関する問題と抵抗やリアクタンスを求める問題の組み合わせや、最大電力問題について問われます。基本的に交流回路の計算と過渡現象は毎年出題されており、数年に一度、二端子対回路の問題が出題されています。九州大学は専門科目の過去問を公開していないので、過去に受験した先輩が記録していた情報を元に学習しました。私は高専3,4年生の授業で基礎が身についていたので、復習は行わず、演習問題をひたすら解いていました。使用した問題集は・詳解 電気回路演習(上)・詳解 電気回路演習(下)この2冊のみです。上巻では第一章、第三章~第五章を行えば十分です。下巻では第二章の二端子対回路、第四章の過渡現象、第五章のラプラス変換を用いた過渡現象の範囲をやっておけば良いと思います。この上下巻を解き終わった後は、九州大学の大学院入試問題を解くことをオススメします。編入学試験と大学院入試の問題は傾向が似ているため、大学院入試の問題が解ければ電気回路については十分だと思います。(大学院入試の問題はネットに過去5年分公開されています)また、九州大学の授業で教科書として使用されている以下の本もオススメです。・電気電子工学シリーズ 電気回路電磁気学電磁気学も大問が3つの構成となっています。出題範囲については、ほとんど全てが対象になると考えていた方が良いと思います。使用した参考書、問題集は主に以下の三冊です。・電気電子工学シリーズ 電磁気学・詳解 電磁気学演習・電磁気学演習ノート一つ目の参考書は、電気回路で紹介した参考書と同じシリーズで、電気回路と同様に九州大学の授業で教科書として使用されています。まず一周目はしっかり内容を読み込み、現象を自分の言葉で説明できるようになりましょう。そして例題や章末問題を通して実際の問題へのアプローチを大まかに身につけてください。その後は何周も繰り返し問題を解く、内容を読み返す、ということを続けてください。ちなみに、10.4章のポインティングベクトルの範囲まで行えば大丈夫です。二つ目の問題集は問題数が非常に多いので、友人と問題を精選して解いたり、答えのない過去問を解く際の答え合わせに用いたりしました。この本をメインで解き進めるというのは、途方もない量なのでやめておきましょう。三つ目の問題集は、上記の二つの問題集に、ポインティングベクトルの問題がほとんど無いため、主にポインティングベクトルの問題演習に用いました。私の高専では授業で習うのですが、周りの編入生に話を聞くと、ポインティングベクトルを習っていない人がほとんどだったので、習っていない場合はしっかり勉強しておきましょう。以上の参考書や問題集に加えて、電気回路と同様に九州大学の大学院入試問題を解くことをオススメします。やはり電磁気学も出題傾向が編入試験と似ているため、雰囲気をつかむにはもってこいだと思います。面接面接は専門科目の試験後に行われます。時間は5分~10分程度だったと思います。質問された内容としては、・志望動機・卒業研究について・他大学の併願・試験の手応え、問題の難易度をどう感じたかでした。一般入試に関しては試験の点数で決まるので、面接は普通に受け答えが出来れば良いと思います。一応、卒業研究の内容や行きたい研究室について言うことをまとめておくといいでしょう。勉強時間について最後に簡単に勉強時間について述べておきます。私は、一人で毎日コツコツ勉強することが非常に苦手でした。自分の性格を踏まえて、一週間のうちに3、4日メリハリをつけて勉強していました。春休みや遠隔授業中については、勉強する日は少なくとも6時間勉強していました。対面授業が始まった後や、友人と家で勉強合宿をしたときは、一日計10時間以上勉強していたと思います。九州大学編入試験当日数学私の受験した年の数学は確率が出なかったため簡単でした。出題範囲は行列、微分方程式、ベクトル解析、フーリエ級数展開でした。大問1:行列3×3行列の固有値・固有ベクトルを求め、対角化するという簡単な問題でした。大問2:微分方程式定数係数二階線形微分方程式が出ました(シンプルな問題とベルヌーイ型)。微分演算子法を用いたら15分程度で解き終わったので非常に簡単でした。大問3:ベクトル解析∇×a=0ならばa=∇ϕを満たすようなスカラ関数が存在するという性質を使う問題でした。静電界の電位の内容が頭に入っていれば簡単な内容でした。大問4:フーリエ級数展開直線、coshxをフーリエ級数展開する問題と、それを応用して無限級数を求める問題でした。計算は大変でしたがじっくり解けば確実に取れる内容でした。以上の構成で30分程余り、十分に見直し出来たので、計算ミスが無ければ満点の自信がありました。英語英語はかなり難化しました。長文読解の和訳が例年に比べて分量が多く内容は難しくなっていました。それ以上に和文英訳が本当に出来なかったです。上記でも述べたように、工業英語のようなアカデミックな内容を問われたので、とりあえず何かしら適当に書きました。体感で4、5割しか解けていないと思います。「円の面積はπ×半径の二乗である。」「〇.〇〇〇を四捨五入すると〇.〇〇になる。」という問題がかなり印象的でした。電気回路 具体的な数値の与えられた交流回路の計算、最大電力問題、過渡現象が出題されました。例年に比べて非常に簡単だったので、90分試験なのですが、30分で解き終わってしまいました。おそらく満点だと思います。電磁気学リングの電界を平板、無限平板に応用する問題、磁気回路、同軸円筒のポインティングベクトルが出題されました。磁気回路の問題を見抜けずに解けませんでしたが、他2問は完答だったので、7割程度解けたと思います。高専から大学編入を目指しているみなさんへまず、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。私は一人で勉強している間、黙々とやり続けても不安は拭えず、非常に辛かったです。ぜび、大学編入を目指す友人と一緒に勉強してください。友人と勉強を教えあいながらアウトプットを増やすと理解も深まります。そして、目の前で友人が頑張っていたら自分もまだまだ頑張ろうと思えます。また、大学編入は情報戦でもあるので、私たちの記事が皆さんの役に立てれば嬉しく思います。最後まで諦めず頑張ってください!