こんにちは,高専テクノゼミで講師をしています,平成31年度大阪大学工学部応用理工学科マテリアル生産科学科目に合格した駿です.今回は高専から大阪大学編入試験に合格するまでの体験談について書こうと思います.高専から大学編入を考えている高専生にぜひ読んでいただければと思います.自己紹介在学高専・学科:徳山工業高等専門学校・機械電気工学科得意科目:数学とそれに準ずるもの苦手科目:文系科目趣味:ゲーム,カフェ巡り高専での順位1年:15位2年:6位3年:8位4年:7位5年:記憶にない(多分25前後)高専からの大学編入で大阪大学を選んだきっかけ高専当時の自分では社会の役に立てない自信がありました.そのため自身の技術力を向上させるため大学編入を希望しました. 当時自信があった科目は数学,専門科目です.そのためこれらの科目で戦うことのできる旧帝大の中でも,比較的実家に近い大阪大学マテリアル生産科学科目を選択しました.さらにマテリアル生産科学科目は研究室とは別に, 接合科学研究所という接合分野での学術論文出版数が世界一の研究所を保有しており高い技術力を得られると考え希望しました.大阪大学編入の併願校とその理由長岡技術科学大学:専門性の高い大学の中でも試験難易度が低い大学を選択することですべり止めとしました.徳山高専専攻科 :精神的余裕を得るために確実に合格できる進路先を選択しました.高専から大阪大学編入の教科別試験対策法ここでは教科別,大問別に試験対策方法を紹介します.数学線形代数 大阪大学工学部の線形代数は近年大きく傾向が変わることなく行列の固有値問題が出ています.その後n乗するなどありますが基本的に行列問題ですので,時間がない場合はベクトルは後回しも戦略の一つかと思います.そのため線形代数に多くの勉強時間を割く必要はないと思います.微分方程式 基本線形の問題しか出ませんが私の代でラプラス変換を必要とする問題が出ました.そのため幅広く勉強する必要があると思います.線形微分方程式とラプラス変換で異なる参考書の問題を解くことをお勧めします.なおラプラス変換では変換表等はもらえないので覚えていきましょう.確率・統計 確率密度分布から検定まで大学数学で習う確率・統計の問題が普通に出てきます.ただ難易度はそこまで高くありません.そのため広く浅くを心掛け,学校の図書館などを利用し多くの参考書を解くようにしましょう.複素関数 年々難しくなっている複素関数です.範囲がどんどん増えているため正直現在どこまで対策すれば網羅できるのかわかりません.少なくとも私が受験した年ではマセマの最終問題までしっかりやれば大丈夫なレベルでした.英語長文読解とにかく様々な英文を読み長文に慣れるしかないと思います.単語等で強烈に難しい問題はないため他の対策をするなかで自然に対策できると思います.後述しますがこの大問はコストパフォーマンスがかなり悪い大問であり,TOEICで充分の対策はできると思います.そのため対策は後回しでも問題ないと思います.英文和訳年によって難易度が大きく異なる印象があります.難しい単語から簡単な単語まで自由に出題され一つでもわからない単語があると全体の意がとりにくくなる印象です.そのため単語を中心に勉強することをお勧めします.和文英訳採点者の裁量が分からないため,どこまでかみ砕いて英文にしていいのかわからない問題.さらに和文が難しいことが多く大問としての難度も高めな印象です.そのためしっかり対策をすることをお勧めします.私は何気ない日常(テレビのコマーシャルなど)を英訳する練習を頭の中でしてました.お勧めです.穴埋め定番の問題から難しいものまであるため対策が難しい大問であると思います.ただ最近は定番の問題が多く出ている印象です.そのため高校生向けの参考書で充分足りると思います.物理力学角運動量やモーメントのつり合いを用いて解いていく回転問題が最近頻出です.そのため,ここは重点を置いて対策しましょう.その他は高校レベルで大丈夫だと思います.波動基本的に高校レベルの対策で大丈夫だと思います.近年の傾向を確認し,プラスアルファの勉強をすれば間違いないと思います熱力学基本的に高校レベルで大丈夫です.電磁気私の受験年に微分方程式を用いた電気回路の問題が出ました.そのため大学範囲(特に過渡現象等)を対策しておく必要があると思います.問題自体は知っておけば難しくないタイプですので広く勉強しておきましょう.面接ここでは私が実際にした対策法を紹介させていただきます.私は面接が不安だったため研究室の先生と担任の先生にまず二回ずつ練習をお願いしました.そこでうまく答えることができなかった質問について家で考え,最後に研究室の先生にもう一回練習をお願いしました.面接を受けた印象ではやはり対策は必須かと思います.特に志望理由は必ず大人に確認を行ってください.大阪大学編入試験当日数学線形代数 よくある固有値や逆行列を求め,最後にその極限をとる問題.普通に編入勉強していたらまず解けないことはありません.微分方程式おそらくこの年受験した学生全員が驚愕したであろうラプラス変換を用いて微分方程式を解く問題.二問構成になっていて一問目はごり押しで何とかなりますが二問目はラプラス変換を含むためそうもいきませんでした.その上積分してラプラス変換する時間は勿論ないため変換表を覚えておく必要があります.確率・統計主に検定問題で区間推定やベルヌーイ試行を用いた問題でした.知っておかないと手も足も出ないが逆に知っていると確実に解ける問題なので対策を忘れずに!複素関数複素積分を実積分に応用するよくある問題でした,積分範囲が上半円ではなく0-2π/a[rad]と範囲指定されていました(aは変数…多分).ただ,ここの処理がわからなくても留数を求める問題などがあり,上半円バージョンができる人は半分以上点数がとれるように設定されていました.英語長文読解とにかく文が長く,解くのに時間がかかる内容でした.しかし配点が非常に低いためコストパフォーマンスの低い大問といえます.そのため最後に解くことをお勧めします.英文和訳大体3行くらいの英文を和訳する問題.難しい文法などは一切なく単語さえ分かる事ができれば比較的優しい問題でした.和文英訳難度は高めです.日頃から日本語を英語にする練習をして慣れておかないと苦しむかもしれません.穴埋め難度はセンター試験レベル.多数あるセンター対策本の中で自分が気に入ったものをやりこめば問題はないと思います.間違い探し個人的に一番苦手でした.英語をしっかりと読まず感覚で読んじゃう人は絶対つまずく設問です.この年は比較的簡単でしっかり解けたことを記憶しています.物理力学角運動量を用いた問題で球がコロコロ階段を駆け上がる問題.しっかり対策していれば大丈夫なレベルでした.波動強めあったり弱めあったりする問題です.正直あんまり覚えていないです…熱力学U字管の片方を密閉し加熱したりしなかったりする問題.基本的にどの物理の参考書でも見かけるような有名問題で対策は容易だと思います.電磁気コンデンサやコイルを用いた電気回路の微分方程式を立て,それを解く問題でした.回路自体は簡単で一度解いたことのある人ならまず解けます.ただ今年初めて微分を交えた電磁気の出題となっており,これには試験官も面接のときに「やりすぎた…」と嘆いていました.しかし一度出てしまったので対策は必須だと思います.面接実際に聞かれた内容→志望理由,試験の出来,入学後目標はあるか,出身高専の進学状況,専門を機械から材料に変更する理由面接官の人たちがとても優しそうな方々で話しやすかったのが印象的でした.ただ大学側は編入生が優秀すぎるあまり試験の出題範囲の適正レベルがわからず困っているようでした.大阪大学のことはインターネットや先輩など,様々な方面から調べていたため研究内容などに詳しく,そのことを絡めて研究したい内容を話すと好感触だったため,しっかりと下調べすることが大切かもしれません.高専生活について(大学編入への取り組み)高専1-3年勉強は元々あまり好きではなく,ほとんどの授業を寝て過ごす日々を送りました.特に怪我で激しい運動ができなくなり部活をやめてからは完全に学校を寝る場所だととらえるようになりました.高専4年就職と進学を選ぶ際に今までの自分を顧みると社会に貢献できる力が何一つ備わってないことに気づき,少しでも自分を変えようと進学を志しました.進学することを決意してすぐ勉強スタート!とはなかなかならず勉強嫌いの性格を変えれないままでいました.そんな時高専テクノゼミの諸先生方と面談し,編入についての心構えや対策方法について学びました.そこで自分の甘さ,編入生の圧倒的な優秀さに衝撃を受け,少しずつではあるが勉強スタート.当時は課題の多さ故,家での勉強時間がなかなか取れなかったため,授業を真面目に聞き,授業時間中に理解することを心掛けました.4年前期は学校のカリキュラム上理解が薄くなりがちな確率・統計学を中心に数学の基礎を復習しました.勉強のモチベーションが下がりそうなときは高専テクノゼミの先生と話すことでモチベーションを維持.このころから勉強に対する意識も高くなり逃げようとしていた自分との決別ができました.この頃も数学を中心に勉強しました.英語はTOEIC対策で単語を軽く勉強する程度で515点くらいだったことを記憶しています.冬休みには物理をスタートし,「物理のエッセンス」を中心に勉強していきました.春休みこのままでは絶対に受からないと自覚し「一日12時間勉強」という目標を掲げ全力で勉強をするようになりました.実際は数日達成出来ない日がありましたが,ほとんどの日で12時間勉強を達成でき,自信につながりました.このころから過去問を意識して受験のための勉強を行いました.数学は過去問と見合しても勉強法をさほど変えることはありませんでしたが,英語はあまりにもTOEICの問題と違うことに驚き,使用参考書を大きく変えるきっかけになりました.高専5年-受験までTOEICが600点行っていないことに不安を覚え,4月に受験し645点を獲得.この頃も内職を含め12時間勉強は継続.数学は5年になる前に十分勉強していたため,この時期は英語と物理に勉強時間のほとんどを費やしました.しかし受験1か月前に限界が来たのか,勉強していたはずなのに気づいたら一時間ただぼーっとして過ごすことが多発し,まったく勉強が身につかなくなったため,受験一か月前はほとんど勉強せずに頭を休めることに使いました.高専から大学編入を目指しているみなさんへ 高専1-3年生活を考えると決して優秀とは言えない生徒だった私ですが,本格的に勉強を始めたのが5年生になる春休みであることを考えると,半年で大阪大学に合格できる実力をつけることができました.要するにあきらめないことが大切で自分を信じて最後までやりきることが大切であるように感じます.特に高専テクノゼミの講師となった今では自分を信じ最後まで努力できる人はかなり少数であると感じます.多くの学生が先生の言ったことをうのみにし,「どうせ私なんて…」と卑屈になり可能性を閉じています.あくまで先生が言ったことは目安であり,時々刻々と変化する編入学という戦場で戦っていくために必要な力は「才能」ではなく「努力量」と「リサーチ力」です. 編入学対策はどうしても他人に頼りづらく,つらいことも多いと思います.ただ夢がかなった時の喜びは相当なものであり,うまくいかなかったとしてもその過程で大きく実力が付くことは確実です.皆さんも自分の可能性を閉じるのではなく,少しの望みを信じ,努力を続けてみてはいかがでしょうか.